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KokoTeraブログ

公認心理師・臨床心理士/博士(医学)
医療現場でカウンセリング歴15年以上。小学生2児の母。
仕事や育児、病気との向き合い方など、様々なご相談に乗ってきました。
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自己肯定感??~つれづれなる心理学1~

心理学一般

やっぱり子育ての話ばかりしているのは、少し飽きるので、
今日からしばらく、日常生活でふと思ったことを心理学の理論と結び付けながら、
つれづれなるままに、持論で話していきたいと思います。

ドはまりした記事

私自身、わりと昔からどの教科も8~9割。

平々凡々とした人間だったせいか、
並々ならぬストイックさや、研ぎ澄まされた感性を持っている方に、あこがれる傾向がありました。

スポーツ、芸能、企業、どの世界でもトップクラスの輝きを放つ方々は多くいらっしゃいますが、
ある時、たまたまSNSに紹介されてきたイチローさんの記事を読んだ時に・・・

文字通り、ドはまりしました。この鋭い感覚が、やはり素晴らしいと。

臨床心理学における自己肯定感

はじめからイチローさんを引用してしまうのはやや卑怯かもしれませんが、
実は私、以前からじわじわと流行りの「自己肯定感」に違和感を持っていました。

臨床心理学の領域で、「自己肯定感」という言葉を広めてこられた高垣忠一郎先生は、
自己肯定感を「自分が自分であって大丈夫」という感覚のこと、と定義されています(高垣, 2009)。
この内容をよく読むと分かりますが、
ここで高垣先生がお話しされている自己肯定感は、とても根深いものです。

古くは、発達段階説を唱えたエリクソン(Erikson, E.H.)が、
「基本的信頼感」を獲得することが、乳児期に最初の発達課題である、と主張しているように、
社会や家庭に守られ、自分が生きる世界を信頼できるようになって初めて、
自分が存在することを肯定できる(=自己肯定感が育まれる)
のであり、
自己肯定感は、ヒトとして社会で生きていく上の根っこの部分、なのだと思います。

たとえば、極めて悲惨な社会情勢や家庭環境の中で育った子供たちは、
この根っこの部分が育っていないゆえに、
自分という人間が存在すること自体を否定してしまうようなことが良く見られます。

こういう人たちは、大人になっても周囲と上手に関係を作っていくことができず、
自分や他人を傷つけたり、人を信頼することができないなど、徐々に問題が深刻化してしまいます。

こうしたことを考えると、
本来の自己肯定感は、家族や先生が、子どもたちを大切に思い、愛情深く、
ときに叱り、ときに抱きしめ、丁寧に丁寧に育まれるものだと私は思うのです。

流行りの自己肯定感

ところが、ちまたでは、
「自己肯定感アップ↗↗」なんていう広告をみることもしばしば。

自分をほめる。自分を認める。
さらには「楽しんで生きればいいよね!」くらいまで過大解釈されている気がします。

とくに教育の分野では、
「自己肯定感を伸ばす」=「褒める」と思われている側面がありますが、
全くの誤解だと声を大にして言いたいのです。

これは親になってつくづく感じたことでもありますし、以前のブログにも書きましたが、
我が子に対しては自分が驚くほどのエネルギーで怒ることができます(笑)。

「叱る」というのは、人から愛されて欲しい、幸せに生きて欲しい、
そういった愛情が根底にあるからこそ起こすことのできる行動だと思います。
どうでもいい相手に怒りなど生まれてこないので、当然のことです。

先ほどもお話ししたように、自己肯定感は、叱られるという行為も含めて、
愛情をかけて育まれるものだと思いますので、
褒めるだけでは自己肯定感は育たないはずだ。というのが私の結論なのです。

ちなみに私もまだ自己肯定感という概念を本当に理解していない1人ですが、
イチローさんの記事に出てきた堀田さんの疑問にひとこと返すなら、
「失敗してもいいじゃん?」と前向きに考えるのが自己肯定感ではなくて、
「失敗する自分も成功する自分も含めて自分であり、たしかにこの世界に存在している」
と自分という人間の存在を認められることが、自己肯定感なのではと思っています。

いやいや心理学の概念って奥深い。つねに科学と哲学の間を歩いています。

そして自己肯定感は一夜にしてならず・・・
自戒も含めて、子どもとの向き合い方を改めて考えてしまったイチローさんの記事でした。

>>過去の投稿も、ぜひご覧になってください。「褒める」についても書いています。
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