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KokoTeraブログ

公認心理師・臨床心理士/博士(医学)
医療現場でカウンセリング歴15年以上。小学生2児の母。
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スルーはしても無視しない~技あり学習心理学10~

心理学一般

ちょっと冷たいスルー対応

前回のブログで、「叱る」よりもある意味で効果的な「スルー」のおはなしをしました。

子どもが望ましくない行動をとった時に、
大人が「スルー(反応しない)」という対応をとることで、
子どもは「構ってもらえる」「聞いてもらえる」というメリットを得られないので、
「行動は続かず、次第になくなっていく(消去される)」というオペラント学習の理論
でした。

しかし、子どもが良くないことをするたびに、親が無視。
・・・それでいいの?ちょっと冷たすぎない?という疑問がわいてくるのももっとも。

それに、無視したところで、子どもの行動は悪化するばかり。
というのも良く経験されることです。

温かいスキンシップが必要?

子どもたちが小さい頃、
ことあるごとに、自分の親や先生たちから「愛情豊かに」「しっかり抱きしめて」と言われ続け、
仕事で夜が遅い日や土日にいない日が多い私にとって、
スキンシップは、耳に蓋をしたくなるような話題でした。

実際に「良くないことをしたらスルーした方がその行動は減るんだから。これでいいんだ。」
と、頑なに自分の親に抵抗したこともありました。

しかし、心理学の専門家はもちろんのこと、
あらゆる教育に携わる方々が幼少期のスキンシップの大切さを語っているのですから、
これは間違いなく大事なことなんだと、どこかで考えをシフトして納得できるようになりました。

とはいえ、「抱きしめれば問題行動は減るの?増長させない?」という私の疑問は消えません。
そこで私はあえて先ほどと同様にオペラント学習に基づく行動分析の視点から、
スキンシップの大切さを考えていきたいと思います。

オペラント学習で考えるスキンシップ

まず、たとえば子どもが「お友達を叩く」「道路で叫ぶ」「おもちゃを盗る」など
問題行動を繰り返していたとします。

もちろん一概に原因はこれですとは言えないわけですが、
これがどうも大人の関心を集めるためのようだと考えられる場面に出くわすことがあります(図)。

つまり、「大人が注意を向けてくれる」「大人が話を聴いてくれる」ことが、
子供にとって好ましい結果(メリット)
となっており、
それを得たいがために問題となる注意引き行動が持続してしまっているような場合です。

このとき、こうした行動の直接的なきっかけになっているのは、
目の前の人(お友達)や物(おもちゃ)ですが、
状態として、そもそも「安心・安全を得たい欲求」「愛情を確認したい欲求」があるからこそ、
それを満たそうと行動してしまっていると考えることができます。

この場合、いくら目の前の刺激を取り除いても、
この欲求が根底にある以上はなかなか問題となっている行動を抑えることは難しくなります。

逆に、安全欲求や愛情欲求が満たされ、常に自分に関心が向けられていることが当たり前となれば、
行動をとることによるメリット(関心が集まる)の力が弱まり、
注意引き行動をとる必要がなくなるのです。

したがって、定期的に「抱きしめてあげること」「スキンシップをとること」を続けていけば、
子どもたちの欲求が徐々に満たされ、
叩く・叫ぶ・盗るなどの問題行動が見られなくなっていく可能性があることが、
オペラント学習の理論からも説明できる
のです。

ちなみにこのように内的な状態をコントロールすることで、
問題となっている行動を生起させにくくする手法のことを専門的には確立操作と呼んでいます

たまにしかお会いできない通常カウンセリングでは、この確立操作はなかなか難しいのですが、
親という距離感だからこそできることもあるのかもしれません。

もう少し踏み込んで考えてみると

ほかの理論も絡ませながら、もう少し踏み込んで整理してみます。

エリクソンの提唱した発達段階説では、
乳幼児は授乳や排せつ処理に加え、泣いたら抱っこしてもらえるという、
安心できる環境で育つことで、自分が生きる世界に対する基本的信頼感を獲得し、
つぎの発達段階に進むことができると考えられています。

またマズローの欲求段階説においても、
安心や愛情の欲求(欠乏動機)が満たされて初めて、自己実現の欲求が生まれるとされています。

つまり、先ほどお話ししたスキンシップにより安心や愛情の欲求が満たされると、
つぎは自立や自己実現に向けた新たな欲求が芽生えてくる
ということです。

一見、同じように見える「叩く」「叫ぶ」の行動であっても、
今度は「じぶんでやりたい!」という欲求を満たすために起こしている行動かもしれません。
道路で泣き叫び、地べたに寝転ぶイヤイヤ期・・・
これもしっかりと愛情を向けて育ててきたからこその次のステップなのですね

さらに、勉強・遊び・・・と大人も子供も満足できる活動に置き換わっていくためには、
時間をかけた大人と子どもの信頼関係の構築が求められそうです
。私も頑張ります。

以前ブログでも語った本来の自己肯定感
このように関心を向けられた経験に基づいて根付くものだということ思いながら、
良かったらまた読んでみてくださいね。

>>これまでの投稿もぜひご覧になってみてください。
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